打ち続く不況の中、業績を上げている成長企業の理由と、その取り組みについて
船井総研上席コンサルタント 中谷氏とロペライオ代表 早水氏が対談。
コンサルティングのスペシャリストから見たロペライオの現在と未来を語る。
中谷(以下中):この不景気の中でも増収増益を実現している企業には、共通点がいくつかあると思うんです。「時流に適応している」「しっかりとした仕組みを作っている」「新卒を採用して育 てている」「社内の風通しがいい」「トップが社長業を命懸けでやっている」。この5つが、私が携わっている成長企業が、共通して取り組んでいる事柄なんですよね。
早水(以下早):そうですね。我々もまだまだ出来ているとは言い切れないですが、まったく同じことを思います。それってすべて、意識しなくては出来ない内容のことですから。努力して取り組んで行こうと思っています。
中:いやいや、ロペライオさんは立派になさっていると思いますよ。私も中古車販売企業のコンサルティングの経験は多いですが、今だったら低価格帯の販売で勝負することを勧めることの方が多いと思います。その方が簡単というか、確実ですから。でも難しい高価格帯で成功しているのは、やはり時流を掴んでいる証拠ですよ。
早:有り難うございます。私も御社の創業者である船井幸雄氏の本はたくさん読んで勉強させてもらいましたから、中谷さんに褒めてもらえるのはとても光栄です。
中:時流に適応するために重要なのは、やはりお客様の声を素直に聞く事だと思います。
早:はい。我々もCS(顧客満足度)を測定するようになって、サービスの姿勢が変わりました。初めて調べたときには、調べなければ良かったと思うくらい、満足度が低いことを思い知らされたんですよ。
中:なるほど、わかります。そこから意識改革が始まったんですね。
早:そうなんです。それも私だけじゃ駄目で、従業員全員の意識改革が必要ですからね。始めのうちは、意識統一が本当に大変でした。
中:末端まで意識を行き渡らせるのは、なかなか容易なことじゃないですから。
早:そして取り組んでいる間に、気が付いたんです。CSを上げるためには、まずES(従業員満足度)を上げることだって。
中:その通り。CS=ESだということに気が付いている企業は、業績も上がっているんです。
早:そして彼らが頑張れる仕組みを作ってあげること。これが重要ですね。
中:従業員のモチベーションというのは、サービスや業績にそのまま反映するものですから。一世代前の経営者には、好景気に会社を大きくした人が多いせいか、自分一人の力で会社を運営する人が少なくないんです。だから従業員のモチベーションに関心が薄いというか、意識が低いんですよね。
早:うちでは「戦略の立案」「遂行」「部下のモチベーション管理」「社長の言葉の伝導」という4つのタスクを、新入社員で部下を持たない社員以外全員に持たせているんです。その仕組みさえ機能していれば、私が居なくても会社は回って行くんです。
中:やはり仕組み作りが重要ですよね。それならば、部下がそのまた部下を育てるという良い循環になるんですね。
早:従業員たちが私からの指示待ちにならないように、戦略を常に求めることで彼らのモチベーションアップにも繋がるし、業績にも反映されてくるのです。
中:まさにCS=ESの仕組みが出来上がっている訳ですね。
早:これも船井幸雄氏の本をはじめ、中谷さんからもですけど、いろいろ勉強させていただいた賜物ですよ(笑)
中:しかし、早水社長は素直な方ですよね。ご自分がいいと感じたら、素直に取り入れて、ストイックに結果を出しています。まさに最初に挙げた条件にある「トップが社長業を命懸けでやっている」に当てはまっていますね。
早:お恥ずかしい。でも社長である私の姿は、良くも悪くも従業員に伝わりますからね。私は彼らの見本であるべきだし、彼らの夢でもあるべきだと思っています。
中:その経営者と従業員の距離感というのも、とても大切です。簡単なようで、とても微妙なものですから。
早:私は従業員たちと、“夢の共有”ができることが理想だと思っているんです。弊社では従業員みんなに、夢の為に“緊急”なことと“重要”なことを、「自分」「家族」「会社」「社会」にカテゴライズをして書き出しをさせているんです。それでロジックツリーを作っていくと、自ずと各個人がやるべきことが見えてくるんですよ。
中:なるほど。今やっている仕事は、夢のためという認識が持てるわけですね。
早:そうなんです。会社が従業員の夢の実現のため、従業員が会社の夢の実現のためという、相互関係ができますから。そうしていると、社長の私も勝手なことしてられないぞ、という気持ちなるんですけどね(笑)。
中:そうした理想を、仕組みにまで作り上げるのはとても難しいことです。CSを高めるために顧客と接するのは、社長自身よりむしろ従業員の方なのだから。一人一人が“ロペライオ人”なんだという意識を持つことが、まさに早水社長が実践なさっている理想の実現なのですね。
早:従業員は全て私の分身であって、従業員自身がロペライオなんだという意識が理想じゃないかと考えています。
中:今この厳しい不況の中で、従業員の育成や教育に予算を割けないという経営者が多い。それが現状ですよね。
早:そうなんです。我々は昨年、コンサルティング事業部を設立したのですが、そちらでコンタクトを取らせて頂いている多くの方が、そういうご意見を持っていることに驚かされました。
中:とくに新卒者の採用を控えている企業さんは、本当に多いんです。
早:厳しい時期には現状で乗り切るという考えが、根強いですからね。
中:それでも早水社長は、新卒者採用にカを入れていますね。それはやはりゼロからの“ロペライオ人”を育てたいという考えからですか?
早:その通りです。新しい人材の獲得と育成は、我が社の未来に直接繋がることですから。それに部下を育てることによって、育てる側の者たちの経験にもなってゆくと思っています。それが責任感に繋がりますし、重要な責任のある仕事を与えることも、金銭とは別の報酬になるのではないでしょうか。
中:レベルの高い仕事や、それに対する評価は、従業員にとってモチベーションに繋がりますね。でも一方で、新卒採用や社員教育にはコストや時間というリスクが付いてきます。新人は失敗も多く犯しますしね。だから、その分野を敬遠する経営者も多いのでしょう。
早:経験の浅い者の失敗を、私はリスクとは考えていません。人は7回行わなければ覚えないと言いますが、失敗すると1回で覚えてしまうものです。失敗したからこそ学べると言う事柄も、沢山あると思いますから。
中:なるほど。
早:しっかりとフォローできる仕組みさえあれば、教育にかかる費用は決して高いものではありません。私が私の分身を育て上げ、その分身が、そのまた分身を育てる。その分身達から、また新たな発想力が生まれるわけですし。結果的にその仕組みがESを上げることに繋がり、そして必ずCSに反映されてゆくのです。
中:その仕組みは素晴らしいですね。本来20年かけて培うベテランの域のスキルを、一般社員にも行き渡らせることができる。そんな仕組みを、実践してらっしゃる。
早:トップセールスマンが、 トップセールスマンを育て、みんなが優れた営業力を身に着ける。これは一見理想論のようですが、決して不可能なことではありません。
中:従業員一人一人が高い意識を実践していく中で、「ES」→「CS」→「高い営業力」→「ES」というループが出来上がっているわけですね。
早:従業員の一人一人が会社を支えているという意識を、私を始め全員が持っていることが大事です。先程も申し上げましたが、“夢の共有”をしているという意識を育てていきたいんです。
中:早水社長ご自身も、ループの中の一員というわけですよね。
早:もちろんです。この意識改革を始めてから、私自身の意識も変わりました。従業員たちに、触発をされますね。そのループを維持、向上させるためにも、従業員教育と意識統合のための仕組み作りは、とても重要だと考えています。
中:私も従業員教育の重要性は常に認識していますし、私の主催している経営者勉強会の会員の方にも常に勧めている事項です。早水社長はこの難しいテーマを仕組みとして、成果を挙げられているのには驚かされますね。今日はとても貴重なお話をさせていただきました。
早:こちらこそ、本日はお忙しい中、ありがとうございました。